東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)155号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決取消事由の存否について判断する。
(一) 原告は、引用発明は、フリツプフロツプ群の出力を組合せたものではないのに、審決が、引用発明もフリツプフロツプ群の出力を組合せたものであり、その点で本願発明は引用発明と実質的に同一であるとしたのは誤りである旨主張する。
成立について争いのない甲第二号証によれば、本願発明の明細書の特許請求の範囲の記載は、請求の原因二のとおりであることが認められ、これによれば、本願発明は「デイジタル信号を発生するフリツプフロツプ群……の出力の組合せ」により複数個の発光体のうちの一つを選択的に発光せしめる構成をとることをその要件とするものであるということができる。しかして、本願発明の明細書及び図面中に説明されている実施例では、「デイジタル信号を発生するフリツプフロツプ群の各出力を並列に組合せている」ものが示されているが、本願発明の特許請求の範囲ではフリツプフロツプ群の「出力の組合せ」がいかなる態様のものであるかは別に限定しているわけではないから、それが右の実施例のものに限られるものでないことはいうまでもない。
ところで、成立について争いのない甲第五号証により、引用発明の実施例について、引用発明における入力パルスに対応する各フリツプフロツプ(F1~Fn……別紙図面(二)第一図参照)の出力の状態をみると、次のとおりである。
パルスが一個入つた状態では、F1の出力はH(ハイレベル)で、それ以外のフリツプフロツプの出力はL(ローレベル)である。
パルスが二個入つた状態では、F1の出力はL、F2の出力はHで、それ以外のフリツプフロツプの出力はLである。
パルスが三個入つた状態では、F1とF2の出力はHで、それ以外のフリツプフロツプの出力はLである。
パルスが四個入つた状態では、F1とF2の出力はL、F3の出力はHで、それ以外のフリツプフロツプの出力はLである。
このように引用発明の実施例においては、印加される入力パルスの数に対応してフリツプフロツプ群の出力の組合せが得られるようになつており、しかも入力パルスの特定の数とフリツプフロツプ群の出力の特定の組合せとが一対一で対応するようになつていることが認められる。
そうすると、引用発明の実施例のものもフリツプフロツプ群の出力を組合せたものであるということができ、この点では本願発明と変らないというべきである。
したがつて、本願発明も引用発明も、ともにフリツプフロツプ群の出力を組合せたものであるとした審決の認定に誤りはない。
(二) 原告は、本願発明と引用発明とはその構成上の相違に基づいて作用効果についても大きな相違がある旨主張する。
しかしながら、本願発明と引用発明とは、前説明のとおり、構成上の相違はないことに帰するので、原告の主張は、その前提において失当である。原告の主張は、本願発明をその実施例に限定して、その作用効果と引用発明のそれとの相違をいうにすぎないものであつて、これを採用するに由ないものである。
三 以上のとおりであり、審決にはこれを取消すべき違法の点はないから、その取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註その一〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。
一 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「露出情報量表示装置」とする発明(以下、「本願発明」という。)につき、昭和四六年一二月三〇日特許出願をしたところ、昭和五四年五月二八日拒絶査定を受けたので、同年七月一八日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五四年審判第八〇六二号事件として審理されたが、昭和五六年四月二〇日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年五月一八日原告に送達された。
二 本願発明の要旨
被写体の明るさを検知し、この明るさに対応する絞り値あるいはシヤツタースピード等の露出情報量をカメラのフアインダー内に表示するための装置において、前記被写体の明るさを検知し電流値に変換するための受光体と前記電流の大きさに応じてデイジタル信号を発生するフリツプフロツプ群とこのフリツプフロツプ群の出力の組合せにより選択的に発光せしめられる複数個の例えば発光ダイオードのような発光体とよりなり、この発光体はフアインダー光学系中に配置されていることとを特徴とするカメラにおける露出情報量の表示装置。(別紙図面(一)参照)
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>